TUS (Tracking Ultraviolet Setup)は超高エネルギー宇宙線の研究を行うための衛星ミッションです。ロシアの ボストチヌイ宇宙基地からソユーズ2.1ロケットでLomonosov衛星に載せて打ち上げられ、2016年4月16日に軌道に投入されました。高度は468kmから483kmで、軌道傾斜角は97.3度になります。ミッション寿命は3年以上を見込んでいます。1年目の観測結果が論文として発表されました。
TUSは地球の夜側で超高エネルギー宇宙線が大気中を通過した時に生じる空気シャワーからの蛍光とチェレンコフ光を紫外線領域で検出することで、GZK限界を超えた7 x 1019 eV以上のエネルギー領域で宇宙線のスペクトル、到来方向、化学組成を測定します。宇宙線以外にも流星や超高層雷放電(TLE)、ゆっくり変化する大気夜光の観測、ストレンジクォーク物質の探索を行います。
TUSの観測装置は大きく分けて2つの部分からなっています。一つは面積2 m2の反射鏡(フレネルタイプの放物面鏡)でもう一つは反射鏡の焦点面に置かれた256画素の光検出器です。反射鏡は7枚の、アルミハニカム構造で強化したカーボンプラスチック製の分割鏡(差し渡し63cmの六角形)からなる複合鏡で、平行光を点に集光するように設計されています。鏡の厚みは3cmで焦点距離は1.5mです。鏡の表面はアルミフィルムを貼り付けた後にMgF2でコーティングし、大気蛍光の中心波長となる350nmでの反射率は約85%です。
光検出器は16個の光電子増倍管からなるクラスターが16個、合計256画素でできており、信号はそれぞれのクラスターにとりつけられた電子回路で読み込まれます。光電子増倍管には直径13mmでマルチアルカリ光電面を持つ浜松ホトニクス社製R1463を使用しています。光電子増倍管の波長350nmでの量子効率は20%です。
参考文献
- B.A. Khrenov et al., “First results from the TUS orbital detector in the extensive air shower mode”, JCAP09(2017)006.
- P.A. Klimov et al., “The TUS detector of extreme energy cosmic rays on board the Lomonosov satellite”, Space Sci. Rev. 212 (2017) 1687-1703.